すごーくすごーく悩んだけれど、やっぱり気になるので行っちゃいました。
東山紀之主演の舞台
『さらばわが愛 覇王別姫』。

劇場にも通ったしDVDでリピートもしまくったほど好きだった映画だし、存在全てに紗がかかったような、あのレスリー・チャンの儚げな蝶衣のイメージが強すぎて、あれがヒガシ?ヒガシがあれ??ってどーにも納得できなくって~。
でも、新聞に載っていたインタビューに、「彼の世界観を壊さないように演じたい」と、レスリーに敬意を払っていることが書かれていて、ぞわっと興味が湧いたのでした。すると不思議なもので、たまたまのぞいたチケット交換サイトに「譲ります」の文字。しかも良席なのに1500円ものディスカウント。即メール。交渉成立。ってことで、バタバタっと観劇が決まったのでありました。
薄布の幕の向こうからやってくるのは小豆子(蝶衣の子供時代)。母親につかまり指を切り落とされるところから物語がはじまります。この導入部分がスローモーションなんです。じっくり見せることで蝶衣の母親への感情を印象づけたんでしょうか。インパクトがありました。
この小豆子を演じた子役がかわいい。赤いリボンがよく似合って丸顔で幼い笑顔が……って思ったら、突然雑伎団ばりの華麗な連続前転決めてくれちゃってビックリ。どこかの体操教室から連れてきたのでしょうか??
華やかな虞姫の衣装を身につけた程蝶衣登場! こ、声が太い…。紛れもなくヒガシの声だ…。
記者会見映像を観たときには身体のゴッツさに驚きましたが、広い舞台に上がってしまうと意外と気にならない。指先まで気を配っている所作やゆっくりとした顔の動きでちゃんと女形らしさを表現しているように見えました。ただ、声が…。こればっかりは持って生まれたものだから質を変えようもないし、変えたらかえって不自然なんだけど、『喰いタン』で「お腹が空きました~」って言っているときと同じなんだもん。ちょっと…あの…。その…。
でもね、歌も台詞もちゃんと聞き取れたし、京劇の高音発声も違和感なかったです。さすが場数踏んでるプロだなぁって思いました。
残念だったのは段小楼役の遠藤憲一さん、歌は何を言っているのか全然わからないほどにヘタでした…。しかも、まさかの声枯れなのか、最後の雄叫びもかなーりざらついた声。えーん。遠藤さんのこと、結構楽しみにしてきたのに。あの低い声、好きなのに。
でもって、全く期待していなかった木村佳乃。お上手でした。歌も上手いし。ゆえに、手も足も首も顎もなにもかもが細すぎて舞台映えしない感じが悲しい。しかも、映画ではあのコン・リーが情念メラメラで演じた役ですもん。比べちゃいけないけど、あのメラメラは彼女にはまだムリでしょう。オトコの取り合いをしているのにちょっと爽やさすら感じる菊仙でした。
袁四爺を演じたのは西岡徳馬さん。1カ月前にお別れしたのに、またお目にかかりました~(笑)
「頼まれずとも程蝶衣は助ける。わっはっは。岡田以蔵、お前の天とは、この武市半平太に違いあるまい!!」あれ? なんか、袁のセリフのうしろに幻聴を聞いてしまった…。
濃ゆいキャラの方の舞台は連続で観ない方がいいと実感。いえ、西岡さんは全く悪くないのですが。
袁と蝶依が関係を深める場面は、カメラとスクリーンという媒介がない分、生々しい感じがしてしまいました。映画では、蝶衣の心が崩れていく様を感じさせてドッと感情移入した場面でしたが、舞台では心ではなく身体が堕ちていくって感じかな。そうそう。これは全体にも言えることなのかも。映画は程蝶衣の心模様を通しての物語で、舞台は蝶衣の身体を通しての物語だったんじゃないかな、って今思っています。
社会情勢に翻弄され、蝶衣という存在そのものも否定されたあげくに自らの首を切り命を絶つラストシーンは、やはりせつない。崩れ落ちる最後の所作までが美しくてそれがせつないんだけれど、賭より抱きしめながら「蝶衣!!」と叫ぶ小楼の声が枯れている……うっ。
冒頭の指を切られるスローモーションからがまた繰り返され、『覇王別姫』を演じる華やかかりしころの蝶衣と小楼が回想されて幕と。
3時間近い映画の物語を2時間に縮めているため、駆け足感は否めませんが、ちゃんと大事なエピソードは踏襲しているし思ったより違和感はありませんでした。映画を知らず、これが初見の人はもしかしたら時代の流れにちょっと付いていくのが大変だったかもしれないけど。感想とも言えない感想ですけど、まぁ、こんな感じでした。
舞台を観たら映画が激しく観たくなりました。これからDVD鑑賞しちゃいます。
あ、この舞台の上演を記念して、Bunkamuraル・シネマで映画がリバイバル上映されますよ。興味のある方はぜひ!(詳しくは
こちら)
そうそう。阿片絶ちの場面にて。
蝶依のシャツがまくれ上がり、それはそれは見事に割れた腹筋が露見してましたが、速攻脳内消去しました。いやん、そんなマッチョな蝶依なんて~。
隣席はスマFanのおば様。開演前ずっとクサナギ賛歌を聞かされてグッタリ(笑)