普段は立ち入ることのできない島・喜靈洲Hei Ling Chauに行ってきました。
刑務所の島として知られるこの島の名前は、坪洲へ行ったことのある方なら船の行き先として目にしたことがあるかと思います。島の位置はランタオ島の東横、坪洲の南側。島の大きさは長洲(チョンチャウ)と同じくらいでしょうか。
その喜靈洲は島のすべてが刑務施設。大変厳しい監視の下にあり、島に入ることができるのは収監される人と島で働く刑務官や事務官、収監されている人に面会に来る人(要許可証)のみというのが通常で、坪洲-喜靈洲を行き来する定期船には、上記以外の人は乗船もできません。
そんな島に、年に1度だけ入れるチャンスがあるのです。
もちろん
合法的に。
(↑ ついにやらかしたか…とか誤解されないよう、ここは声を大にしたい!)
それは、この島を含む香港全土の刑務所に関係する職員とその家族の労をねぎらい、コミュニケーションを図るために島が開放される「ファミリーデー」。ファミリーの日ですからスタッフの親族が主な招待客ではありますが、数名ならば友人知人も同行可能とのこと。長年刑務官として勤務なさった友人の友人ご夫妻のありがたいお誘いを受けて、今回同行させていただきました。
集合は中環の碼頭。貸切のフェリーに乗り込みます。きっちりとナンバリングされた乗船券の提示、スタッフによる人数のカウント、加えて手の甲にブラックライトスタンプを押されます。
定期船の場合は中環-坪洲-喜靈洲という船旅になりますが、イベントの貸切船のため約40分ほどで直行します。
喜靈洲碼頭には監視官が待機している監視小屋があり、普段は様々な身分照会があってのちの上陸となることがうかがえます。私たちは乗船時にチェックを済ませているので、そのまま島へと入りました。
先発の船で到着した人でごった返す中、バルーンアートを作るボランティアの人もあり、飲み物を配布する人もあり、元同僚に出会ってハグし合う人もたくさん。この日を楽しみにしていたことが晴れやかな笑顔から伝わってきます。厳格な仕事をする人同士の独特の絆いうものもあるのでしょうね。
このファミリーデーのメインイベントはハイキング。島の中を施設見学を兼ねてぐるりと歩きます。
カウントダウンと共に紙吹雪が打ち出されて、ハイキングスタート!
島といってもちょっとした山ほどのアップダウンがあります。碼頭に近い麓のほうには、宿泊所など職員用の施設が集まっています。
話によると、スタッフはこの島に暮らしているわけではなく、通常は島外の自宅に暮らしていて、勤務がある日に喜靈洲へやってくるのだそうです。夜勤を含む2~3日勤務の後に自宅にもどり、休暇を挟んでまた勤務というサイクルだそう。
こんな話をしながら私たちを案内してくれた友人の友人夫妻MさんとJさんは、長らく刑務官を務め、勇退時には表彰も受けたという立派な方。通常2~3年ごとに転勤があるので(長く同じところに務めさせないというルールもあるそう)喜靈洲を含む香港内に10数カ所ある刑務所のほとんどに勤務したそうです。
道はきれいに整備され。周辺の緑もきちんと手入れされています。濃い緑の合間からのぞく海、木々の間から見える鉄条網。
男性の受刑者が収監されている施設です。
「歓迎」とか
「Welcome」とかいう言葉がこれほど不釣り合いな場所もないのではないかとは思うのだけど、なぜかそう書かれた立派な看板があったりもします。
鉄条網は3重になっていて、一番外側の配管パイプなどが走るエリアは誰も入ることができないとのこと(修理も何重もの許可取りと厳しい監視下での作業になる)。警察犬による見まわりも頻繁に行われています。
この鉄条網は編まれたものではなく、鉄を打ち抜いて網状にしたもの。指がかけられないように小さな穴になっています。
細くはない指ですが、私の指もひっかけることはできません。
そんな鉄条網の外側には、動物が飼育され、花々が育てられている環境保全エリアも。
言葉の通じない動物や植物の世話をすることも精神的な矯正プログラムのひとつということです。
香港の刑務所は、香港懲教署という機関が管理しています。
この喜靈洲には、喜靈洲懲教所(男性)、喜靈洲戒毒所(男性)、勵新懲教所(男性)、勵顧懲教所(女性)の4つの収容施設があります。
離島 → 島流し→ 重犯罪者!!!!と勝手にイメージしていましたが、4カ所とも比較的刑の軽い受刑者や薬物使用の受刑者が収監されているのだそう。妄想を広げた思い込みはいけません、自分!
緑豊かな環境の整備など外での作業もあるし、動物や植物に触れたりと、更正のための作業や訓練がしやすい場と言うことなのですね。平均4ヶ月~半年でほとんどの人が刑期を終えるそうです。
「おやっ」とJさんに声を掛けられ指さす方を見てみると、車から受刑者が数人降りてきました。面会だそうです。こういう日だということはもちろん知らされているため、全員マスクを着用。手錠はしておらず、普通に歩いていました。
島のハイキングはまだ半分。
その②へ続きます。
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