今回、長崎を旅先に選んだのは「軍艦島が見たい」という理由からでした。

軍艦島は正式名称を端島(はしま)という長崎県長崎市の離島。明治から昭和40年代 にかけて海底炭鉱によって栄え、その小さな島に近代建築を尽くした都市が築かれたところです。海上に浮かぶその島の姿が、海軍の戦艦・土佐に似ていることから「軍艦島」と呼ばれるようになりました。
この軍艦島へは、長崎港から出るツアークルーズ(4社あって、それぞれが午前午後の1日2便出航)でしか行くことができません。海の具合によっては欠航もあり、もし出航できたとしても、軍艦島周辺の波の状況など安全基準を満たさない時は上陸できない可能性もあります。
この日は幸運にもツアー催行、途中小雨が降りましたが波の状況は悪くなく、無事に上陸を果たすことができました。クルーズ会社によって他の離島に寄る場合もあるので一概には言えないのですが、長崎港から軍艦島まではおよそ30分です。

炭坑の閉鎖から約40年、無人の状態で放置されたこともあり建物の劣化も激しく、保護保存の為に調査隊が入っているそうですが、まだ最善の方法は見つかっていないとのこと。少しずつ増築しているので建物ごとに使用資材が違ったり、防潮堤を乗り越えて波が当たっていた建物、潮風にさらされた建物と様々な条件があるため、ひとくくりでの「保護」では済まないのとのお話でした。

見学中に建物が崩れてくる可能性もないとは言い切れないため、一般の見学者は設けられた見学ルートに沿った3つのポイントからのみになります。ガイドさんから当時の炭坑の仕事、生活の様子などの説明を受けながら、経年劣化により倒壊した建物を見る。小さな島に作られた都市、5000人以上が暮らしていた都市が、自然に朽ちてしまった様はもの悲しさもありましたが、想像を巡らせば当時の様子が浮かんでくるようなリアルな空気もまだ残していました。

正面が日本最古の鉄筋コンクリートのアパート。同潤会アパートより前、1916年に建築されました。
「島」と名前が付いていますが、もともとはちょっと大きめの「岩」で、その岩の周辺を6回埋め立てて現在の大きさの「島」になったそう。もともとが岩なので、軍艦島には土がなく、島に暮らす子どもたちの情操教育のために土を持ち込み、建物の屋上に庭園や菜園を作りました。現在の屋上緑化の原型は軍艦島にあったとも言われているそうです。
日本全国でテレビの普及率が数パーセントの中、軍艦島では99パーセント導入されていたりと、軍艦島での暮らしは当時の都市部の生活水準に比べても非常に裕福で、炭坑での収入高さ、炭坑景気の良さがうかがえます。


赤い煉瓦壁は幹部社員の総合事務所のもの。この日は雨上がりなので赤い煉瓦に見えますが、好天が続くと染み込んだ塩分が吹き出して白い壁になるとか。その横にある階段のある建物は第二竪工入坑桟橋。右側の高い建物の方に炭坑へと繋がる高速エスカレーターが設置されていました。崩れずにその姿を留める階段には、炭坑内で石炭を踏みしめた靴で行き来するため、黒いシミがくっきりと付いています。

高台に建つのが三菱の幹部社員の社宅。労働者たちが住む住居はどこも今日共同浴場、共同炊事場のなか、バストイレキッチンなどすべてが揃った広い造りでした。

屋根がひしゃげているのが学校です。下層階が小学校で上層階が中学校。
このほかマンションの屋上に幼稚園もあり、最新の医療機器の揃った病院、警察署、映画館、パチンコ店、神社、お寺、銭湯などなど、今我々の暮らしの中にあるもののほとんどが、東京ドーム1.3個分の敷地に詰まっていました。

木造だった寺院は、柱の残骸を残してすべて崩れてしまっています。

住居の2階左よりのところに開いている穴は、石炭のゴミ“ぼた”を海へと投棄するためにベルトコンベアを通していたもの。24時間稼働していたそうなので、その周辺の部屋を割り当てられた人の生活って……
そもそも軍艦島へ行ってみたいと思ったのは、『007スカイフォール』を観たから。廃墟のようなモノトーンの映像が非常に印象的で、実際に見てみたいと。しかし、このときにうかがった話では、実際は撮影許可が下りず、ロケハンに来た監督が撮った写真をもとにロンドンにセットを組んで撮影したのだそう。
本物と疑うことなく「実際に行って見てみたい!」とここまでやって来て、意外な事実をガイドさんの説明で知る…。一瞬「ええっ」となりましたが、よく考えればそれだけリアルなセットだったということだし、監督に「撮影が不可ならば、セットを組んででも映像に使いたい」と思わせる独自の空気を持つ場所だったということですよね。

B'zの「MY LONELY TOWN」のPVも軍艦島で撮影されていますが、このあたりが登場しますね。
この夏公開の『進撃の巨人』の実写版映画でも撮影に使われているため、クルーズ船のオフィスなどにはグッズなどが並んでいました。ガイドさんに撮影場所をうかがいましたが、見学コースからは見ることができないポイントでした。
実は、初めての軍艦島から受ける衝撃というか…大きなインパクトがあったので、2日目も別のクルーズに参加してしまいました。初日のクルーズでは説明の無かったこと、またその逆もあり、2回行ったことで諸々が補完されて、納得満足のいく軍艦島体験となりました。


1日目参加:
軍艦島上陸クルーズ ブラックダイヤモンド2日目参加:
軍艦島コンシェルジュ
軍艦島がいちばん軍艦ぽく見える角度がここだそうです。軍艦島コンシェルジュのツアーで見ることができます。
※写真は1日目2日目ミックスで使用しています。↓ ↓登録カテゴリーを変えました。
ツアー参加者んは外国人もたくさん。広東語が聞こえてきたときはうれしくなりました!