それは4月のある日のこと、無機質な件名が並ぶ受信メールの中に気になるものひとつ。
「メルマガ登録キャンペーン」ご当選おめでとうございます当選? ス、ス、ス、スパムじゃないでしょうねぇーーーと緊張しながら開封してみると、メールの主はなんと英国政府観光庁。
激しくなる鼓動を押さえて文字を追うと、『ミシュランスターシェフ、ギャリー・ローズ氏による「トラディショナル英国式アフタヌーンティー@シャングリ・ラ ホテル 東京」に当選されました』と。
「メルマガ登録キャンペーン」…そういえば少し前にメルマガ配信希望の手続きをしたような……。それがアフタヌーンティーへの招待応募とイコールだということはそのときはなんとなく意識した気もしますが、それきりすっかりわすれていたので、とにかくびっくり仰天です。
メールをくださったご担当の方にとっても丁寧なご対応をいただき、疑念(失礼!)も緊張も解けて晴れて予約完了。そんなわけで先日、シャングリ・ラ ホテル東京のロビーラウンジで英国式のアフタヌーンティーを体験してきました。



28階ロビーラウンジの窓際席から日本橋方面の眺望を愛で、厳かに運ばれてきたサンドウィッチとホットカナッペのプレートからスタートです。
香港で何度かアフタヌーンティーの経験はあるのですが、このようにティースタンドが分かれているものは初めてです。3段プレートにそれぞれが盛られたスタンドがドーンとテーブルのセンターにドーンと置かれて終了!が一般的なのかと思っていましたが、このようにスタンドを分けてコース料理風にサーブするのが英国伝統のスタイルなのでしょうか。優雅過ぎる~。


ローストビーフサンドには西洋わさびの効いたさわやかなソースを、ホットカナッペのサーモンとパセリのフィッシュケーキにレモンクレームフレッシュをそっとかけていただきました。
ガサツかつ豪快なここ最近のロンドン旅(←これはこれですっごい楽しかったけど)では経験していない繊細で上品なお味。サンドウィッチを持つ手の小指が立ち上がってしまうのは自然のなりゆきね…。
そして、頃合いを見計らってデザートスタンドがやってきました。

スコーンと4種の焼き菓子。クリームやチョコレートで飾り立てることはなく、果汁やスパイスなどを巧みに使った、英国らしいシンプルな大人のスイーツが輝いています。
しっとりとやわらかなスコーンには乳脂肪分の高いこってりとしたクロテッドクリームをたっぷりとつけて。ベリージャムの酸味とのコンビネーションは最強ですよね。場所を忘れて、これおかわり!と言いたくなる口当たりの優しいスコーンでした。


カップケーキはあまり得意ではない、その理由はオイリーでヘビーだから……という誤った思い込みがすっかり取り払われた上品なケーキたち。
はちみつ、チョコレート、オレンジとブルーベリーのカップケーキ、そしてドライフルーツたっぷりのヴィクトリアスポンジケーキ。過不足のないしっとり感、ごく自然に口に広がる果汁の風味、濃厚なのにおだやかに消えていくカカオの味。ヘビーなんてとんでもない!という軽やかなカップケーキでした。

変な思い込みは、今までどっかーんとアメリカンなカップケーキしか食べていなかったからってことなのかな。こんな機会をいただかなかったら、きっとカップケーキは苦手、と言い続けていたかも。今まで逃してきたものもきっと多かったんだろうなぁ……モッタイナイ
シメにいただいたのは、イートンメス。ベリーソースとバニラクリームの層の上にちょこんとメレンゲがのっています。

細身のスプーンで2層を一緒にすくい取り口へ。少し強めのベリーの酸味にバニラビーンの香るクリームの甘み。しあわせな甘酸っぱさ! ほら、ここでもクリームとベリーの最強の組み合わせ。まったく、一日に2度も骨抜きにされるとは、贅沢すぎる時間、贅沢すぎる自分。
少し前に本で見たイートンメスは、もっとたくさんのメレンゲにベリーソースちょびっと、その上に生クリームのようなものがこってり飾られたビジュアルだったのですが、さすがミシュランスターシェフの作り出すものの品の良さは桁違いだわっっ!
とグラスまでなめそうになるほどとろけていたところへスッと現れたコックコートをまとった紳士。ん?と見上げると、これらアフタヌーンティーを手がけたギャリー・ローズ氏、まさにその人!わざわざテーブルへあいさつに来てくださいました。
ひゃー!
驚きと感激で思わず立ち上がり、気をつけ。ようやく声になった「お会いできてうれしいっす!」のあいさつと同時に握手を求めてしまいましたが、アフタヌーンティーを楽しむ優雅なマダムは座ったままスッと手を差し出すだけで無問題らしく、なにやってんだアタシ状態でございました。
周囲のマダムたちの目線が痛……舞い上がっているから痛くはなかったけど、そういう作法もちゃんと知っておかないと、いざというときに恥をかくわけですねぇ。そうそうこのような機会はないと思うけれど、TPOって大事という部分ではすべてに繋がるわけだものね。

お茶はティーリストの中から茶葉を代えてなんどもおかわりができるので、3種類の紅茶、最後にコーヒーもいただいて、目にも口にも心にも優雅極まりない時間を過ごしたのでした。
2月の香港旅は激しくヘコむ出来事でスタートしましたが、こんな幸運に遭遇することもあるんだし……人生ってどこかで帳尻が合うように出来ているのかなーーーと思ったできごとでした。
反対側のテーブルでは某作家先生が打ち合わせ中でした。さすがホテルラウンジ。