映画出演決定の報から待ち続けたこの瞬間。試写会に行きそこねるという挫折もありながらも、ようやく『人間失格』の中原中也に対面できました。
2月19日 『人間失格』プレミアナイト
15:50開映 ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン10

葉蔵に常につきまとう居場所のない空虚感を美しい映像で淡々と綴った映画『人間失格』。太宰治の文章で読んだときはもっと単色で色彩感のない世界が私の脳内に描かれていましたが、映画は非常に色美しく、その色彩美がぐんぐん胸に迫ってきました。物語としては不足を感じない部分がないとはいえないけれど、それはこの際置いておいて。
葉蔵の文学者としての人生に大きな影響を与えた人物として登場する実在の詩人・中原中也。小説『人間失格』には登場しない、映画オリジナルの登場人物です。この中原中也を森田剛が演じています。黒髪に包まれた顔は常にどこか苦痛を孕んだようなせつなげな表情を浮かべ、低めの声でとつとつと話す中原中也は、バーで出会うなり葉蔵に絡んだにも関わらず、その後は慈愛に満ちた優しさで葉蔵に接し、鎌倉への旅では心の内を交わしあい、良き理解者となっていきます。恋愛にも似たそんな時間はほんの短い時のことなれど…。
葉蔵はひたすら転落をつづけ人間として「失格」となってしまうのですが、小説の救いのないラストと映画は少し違っていました。人生を落ちていく中で、葉蔵に最後に響いたのが空虚な人生の中で唯一の理解者ともいえる中也の声だったのか…とわずかな光りを感じさせるエンディング。その中也の少し低くてぼくとつとした声が私の耳にもまだ残っています。
エンドロール。真っ黒な画面の真ん中に一行
中原中也 森田剛
と出た瞬間、危うく涙が出そうになりました。よかったね。よかったね。よかったね。
「よかったね」なんて失礼だね。だって、総出演時間は短いながらも、ひとりで名前を出してもらえるくらいに印象的で主人公に関わる重要な役を演じきっていたもん!
森田剛はイコール中原中也ではないけれど、中原中也という人にすごく興味を持ちました。興味を持たせてもらいました。国語の教科書でしか触れたことのない人だけれど、詩集を読んでもっと知ってみたいと思いましたから。
スタッフロールとモノクロのスチール写真との組み合わせで物語の余韻を残しながら映画『人間失格』は終わります。
会場が明るくなり、ざわめきと共にスチールとムービーのカメラマンが会場になだれ込んできました。この回の舞台あいさつは取材つきでした。
司会者のかけ声で舞台あいさつが始まります。
荒戸源次郎監督、生田斗真、伊勢谷友介、三田佳子、室井滋、小池栄子、大楠道代、石原さとみ、坂井真紀、そして森田剛が登壇。
グレーのスーツに黒のシャツ姿の剛くんは、髪は金髪だし見た目は舞台『血は立ったまま眠っている』の良のまま。黒髪で和装の中也とは全く違う姿ですけれど、スクリーンの前に立つ佇まいは、きちんと「荒戸源次郎監督の元で中原中也を演じた」森田剛なのでした。すごいな。そのオーラの出し方。
今回(映画の中で)すごく素敵な言葉を言わせてもらいました。
みなさんの満足げな顔を観られたので、僕も満足です。
と短めのあいさつ。
「公開を明日に控えてのお気持ちを」と問われた生田斗真くんが感極まって涙を浮かべたときには、後輩の突然の涙に一瞬動揺した感も見られましたが、努めてクールであろうとしていました。時折お隣に立つバーのマダム役の大楠道代さんと目配せして軽く笑いあったりして、キャスト間のいい雰囲気も垣間見られました。
その大楠さんですけど、今日のお召し物はなんとグレーのミニワンピースにサイハイブーツ!超かっこいい! 失礼ながらあのお年でそんなファッションをばっちり決められるなんて、さすが女優さん! しかもシルバーがかかったグレーのワンピース、剛くんのグレースーツといい具合にマッチングしちゃってカップルみたいでした~(笑)
最後は中央に集まってのフォトコール。
人数が多いので前後2段に分かれての撮影でしたが、剛くんの右隣は小池栄子さん。うわっ。背高い!ちょっとハイヒール脱いであげてよ~!
そして、前列が斗真くんと伊勢谷友介さん。うわー。おふたりの頭が剛くんの顔にかぶっちゃってる…。せっかくの写真なのに! ちっちゃいんだから、ちょっとなんとかしてあげてー!箱馬、追加追加!
……なんて客席から心配していたら、カメラマンさんが口ぐちに叫びだしました。
モリタさん、顔見えません!!!
あんまり何度も叫ばれるもんだから、会場からも笑いが起きちゃうし、本人も苦笑い。よよよ。……だから最初から前段に立たせてくれればいいのにー。ちっちゃいんだからさー!(ファンがちっちゃいちっちゃい連発すんな!)

明日は剛くんの誕生日。今日のあの姿が30歳最後。
カミコンがあり映画がありアジアツアーがあり舞台があり。充実した1年を過ごした彼の人の30歳を締めくくる姿を見送れてよかった。やっぱりかっこいいしかわいいし最高ですよ!何年経ってもメロメロ(←死語)ですよ。
劇中、中原中也が天を仰ぎながら舌を出す場面があります。その舌があまりにエロティックでどぎまぎしてしまいました。その仕草は儚げなんだけれど、舌は生々しく生を感じさせます。まもなく途絶えようとしているからこその強い生といいますか。
役柄で劇中のこととはいえ、剛くんの舌をあんなにしっかりと見たのは初めてで…。今夜は眠れないかも…。(意外と乙女なんだよ、アタシも)
真夏の京都で冬の着物でマフラーまで巻いて平然と芝居…。役者ってすごいなぁ~