毎度のことながら緊張でお腹が痛くなり、腹部に手を当て屈んだ状態で向かえた『血は立ったまま眠っている』初日。
寺山修二の戯曲を蜷川幸雄が演出して、森田剛が主演と。
主演のうんぬんはともかく、前者ふたりの名前があることで開幕前のメディアの扱いも格段に違うように感じ、ビッグネームに起用されることの大きさというものファンの端くれながらも感じたわけで…。
友人たちの手助けもあって、玉砕から少しずつ立ち直って手にしたチケット。濁流涙をながした玉砕時には、まさか初日が見られるとは思ってもみなかった…。
2階の端っこの見切れ席とはいえ、その場を見守ることができることを光栄に思いつつ、昨夜シアターコクーンへ行って参りました。
幕が開く。
でも「幕」は使用しておらず、Bunkamuraの駐車場からシアターコクーンの舞台への資材搬入口のドアが開く。わーっ!という雄叫びとともに赤い旗を激しく振りながらなだれ込んでくる人たち。
ん?デジャブ??
この場面どこかで見たことがあるんだけれど…
あ!思い出した!
『さらば、わが愛』のときも、搬入口全開の状態から始まったんだった!
一度ならず二度までも…。いや、否定はしませんが、見事な“デジャブ”にびっくりはしました。きっと、リアルな渋谷から舞台上へと演者がなだれこんでくることで、現代を生きる観客を「これからその時代へ行くんだぜ!」と誘っているんでしょう、と勝手な解釈。(調べてみたところ、搬入口使用は蜷川氏の得意技らしいです)
1960年代安保闘争激しきころの時代背景や場面、そこに綴られる物語は決して品のあるものではなく、その時代に熱く生きた人たちの心の底の部分を描いているのだろうと戯曲を読んで自分なりに解釈してはいたつもりでした。
でも、でも。正直厳しかった~。
港町の倉庫に暮らす良、灰男というふたりの若きテロリストと、そこに現れる良の姉である夏美。
夏美と出会うことでテロ行為へ熱意を失っていく灰男と、灰男を慕いテロリストの先輩として心酔していた良。良が灰男の心理変化に対峙して突き進む先は…。
というのが主軸の物語。
もうひとつ平行して流れる物語は、その倉庫の番人とその周辺で繰り広げられる荒涼な日常。本能のままに生きる人たちの混沌として猥雑な話が、主軸とは全く交わることなく時代象徴的に大きく挿入されていきます。
このもうひとつの物語がね、キツかったんです。
戯曲では時代の描写として読みつづけられたものも、色がついて生命を吹き込まれて舞台に乗るとこれがもうギンギラギンギラと迫ってきてしんどい~。キレイキレイな話ではないことを、時代のバックグラウンドを描くことで際立たせるために必要な場面でそのための演出なのだろうと分ってはいても、そのギンギラさ加減が濃すぎて、「ちょ、ちょっと待って~」状態。初見ではほぼ意味不明。『身毒丸』を見たときに「???」となったのと同じ現象に襲われてしまい、ちょっとクラッと…。
3人の物語がどちらかといえば淡色でとつとつと流れていくのに対して(交わされる言葉は暴力的で熱いけど)、番人たちの荒れた暮らしはギンギラどろんどろん。その濃淡、寒暖、緩急の対比がこの舞台のカギなのかもしれない、きっとそうにちがいない!と思いながら見通しましたが、初日の感想は「………。」
きっとリピートするうちに、安保闘争を肌で感じたことのない私にもその時代の息吹を多少は感じ取れるようにはなるかもしれないし、ちりばめられているであろう細かい設定の意味を見出すかもしれないし……。うん。前向きに観てみよう。次の観劇までに、もう一度戯曲を読み直そーっと。
舞台慣れしていないし、問題提起されたものに対して即座に自分なりの解釈へ導く能力を持ち合わせていないゆえ、物語全体の理解という部分では追いついていけなかったですけど、私にはひとつ明るい大きな光がありました。
そう!主演俳優を見ること!!
かわいい!とにかくかわいい!!!
17歳の役柄ですから、まだまだ残っている純粋で無邪気な部分を隅々まで体現していて本当にかわいらしかった!
灰男に心酔してテロリストへの道を突き進むうちに、同士としての感情以上のものを抱くようになっている様子を手や口元の小さな変化で表していたり、目指すものを違えてしまった苦悩を手の筋の一本一本までに痛々しいくらいに表現していました。
蜷川マニアや舞台マニアの人にしてみれば、文句のひとつも言いたい粗もあるでしょうけれど、早口のセリフが多いのに、
『IZO』の時と同じく一度も噛んだりつかえたりすることなく、全てを聞き取れる滑舌と声量で言い切ったというところは、素直に彼の努力を認めて欲しいなぁ~。(ファンの願い)
そして思ったこと。
パッとピンスポが当たった瞬間にドバーッと大量放されるオーラは、やっぱりアイドル様でスター様なんだなぁ~って。1幕の終わり、トラックの上に立ちこれからのテロ行為への意志を強める場面では、そのオーラに気圧されましたもん。見切れ席で気圧されているんですもん、正面席だったらどうなっちゃうんでしょう~。
前作の『IZO』の、泣けて泣けて帰り道でも思いだして涙が出て、細かい設定が悲しみに繋がっていることを見るほどに知って泣いて、とにかく常に胸いっぱいだった舞台がまだ心の中に居座っている状態ではあるけれど、それとは180度違うこの作品も間違いなく剛くんにとっての大きなキャリアになるのだから、2月末の大阪千秋楽まで熱く見守りたいと思います。
初日、その『IZO』の脚本を書かれた青木豪さんがいらしてました。蜷川氏の舞台脚本も書いていることもあってでしょうけど、シアターBRAVA!の前でご対面しちゃったあのお顔を発見して、「その節は本当に良い作品をありがとう!」と心の中でつぶやいたのでした。
しかし!その青木氏に目が行っていたせいで、同じ列に座っていたというイノッチを見逃していました……。ああああ……orz
関ジャニの安田くんと丸山くんも発見。初日から3人もジャニが来るのも珍しいよね~